2016年6月12日日曜日

最高裁判例(人家緻密の場所とは?)

鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律違反被告事件
平成12年2月24日 最高裁第二小法廷
事件番号 平成9(あ)1299

鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律16条の銃猟禁止地域である
「人家稠密(ちゅうみつ)ノ場所」について争われた刑事事件として有名。

高等裁判所において有罪とされ,上告したが,
憲法判断のみを行う最高裁の上告理由にはあたらない
として上告棄却された。

 なお、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律一六条が
「市街其ノ他人家稠密ノ場所」等における銃猟を禁止しているのは、
このような場所において銃器を使用して狩猟をすることが
他人の生命、身体等に危険を及ぼすおそれがあるので、
これを防止することなどを目的とするものである。
したがって、同条にいう「人家稠密ノ場所」に該当するか否かは、
右のような同条の趣旨に照らして判断すべきところ、
原判決の認定及び記録によると、
【要旨】被告人が狩猟のため散弾銃を発射した場所は
人家と田畑が混在する地域内にあり、
発射地点の周囲半径約二〇〇メートル以内に人家が約一〇軒あるなどの状況
が認められるのであるから、右場所が「人家稠密ノ場所」に当たる
とした原判断は相当である。

として,最高裁も原審の大阪高等裁判所の判決を支持した。

これを受けて,
よく「200m以内に人家が10件もないからここは銃猟OK」
とか言ってる人がいるけどそれは誤り。

当該事件の「半径200m以内に人家が約10軒ある」というのは,
本件捜査の過程で行われた警察官の実況見分によって
明らかになった具体的状況である。

裁判官が言っているのは,
「今回の事件みたいな場所だったら『人家 稠密ノ場所』にあたるよね」ということ。

範囲としては,
「人家稠密ノ場所」>「半径200m以内に人家約10軒」
なのだ。

だから「半径200m以内に9軒」でも該当するかもしれないし,
「半径300m以内に10軒」でも該当するかもしれない。

じゃあ半径何m以内に何軒だったらOKなの?
と聞きたくなるかもしれないが,司法はそんなこと言ってくれない。

実際に(警察や検察の)捜査が始まり,
起訴されて,裁判所に事件が届いてからはじめて判断が下るのである。

捕まえる側の捜査機関(警察や検察)にどこから捕まえるのか
聞いても当然回答は得られない。